【Uzembe(怠惰)】
“ Si taki!! Si taki!!(ヤダ!ヤダ!)”
泣きじゃくる罪なき子どもたち。
ドレッシングルーム(火傷の消毒、包帯交換を行う部屋)。
火傷を負った子どもにとっての恐怖の部屋。
訳も分からず、痛いことをされる部屋。
2日に1回強制的に連行される部屋。
必死に抵抗しても、全力で押さえつけられる部屋。
それも痛み止めや鎮静なしで行われる。
……トラウマだわ。
入院患者の火傷の程度は激しい。
火傷の面積は、全体表面積に占める割合(%TBSA)で算出される。
火傷の深度にもよるが、40%以上は、死のリスクに晒される。
もちろん20~30%台でも助からない子は助からない。
もともとの皮膚が黒いせいか、火傷が目立ち、痛々しい。
火傷のリスク因子は何か?
*年齢:多くが1-3歳または6-10歳。
認知発達よりも行動発達が著しく、行動範囲が広くなる頃。
または、調理のお手伝いをし始める頃。
*場所:約90%が住宅環境で生じる。
*場面:約90%が調理中の事故。
その他、てんかん、虐待、就寝時…
*住宅環境:日本の都会と似ているダルエスサラームでは、一部屋一家族の世帯が多く、一部屋で食べる、遊ぶ、調理する、寝る、勉強する、などが行われる。当然、遊び場と調理する場が混在すると事故のリスクが高まる。
*調理器具:3つ石かまど、七輪みたいなやつ、ガスコンロ
*電気:停電すれば、灯油ランプまたはろうそくを使用する。
*不注意:両親の不注意。
実際カルテで原因を見てみると…
水を煮沸中の鍋にあたって、熱湯をかぶって熱傷。
地面に置いてあったママが飲むためのチャイ(熱湯)に触れて熱傷。
マハラゲ(豆)の入った鍋が誤って三つ石かまどから落ちて熱傷。
ろうそくを付けたまま寝たら蚊帳に炎が移って熱傷。
調理を手伝っていたら足元にある七輪の炎がカンガ(伝統服)に移って熱傷。
…日本だとどーだろう?
わざわざ煮沸しなくても、きれいな水が手に入るし、
家に子どもが届かない高さのテーブルはあるし、
鍋が安定して置けるガスコンロがあるし、
子どもが届かない高さの電気コンロがあるし、
家に電気があるから、ろうそくを付けることもあまりないし、
火災報知器もあるし?
不平等じゃんかー。子どもに罪はない。
生まれてくる子どもは国を選べない。
でも、何が一番悔しいかって、
火傷をしてしまった子どもに対する親の受け止め方。
“Bahatimbaya(運が悪かった)”
“神が決めたことだから仕方がない”
…え、
うっそぉおおおおおーーーー?!?!
嘘って言って、お願い。涙
もうちょっとだけ考えてみよーよ!
自分がもし〇〇をしなかったら、
子どもは火傷しなかったかもしれない。
It’s PREVENTABLE!!!
神はわざわざ子どもを火傷に負わせたりしない。
日本のママやパパだったら、
まず自責の念には駆られるところ…
でも、そういう責任感はあまり見受けられない。
(だめだめ、日本の価値観押し付けまい;)
私「どうしたら火傷の子どもを減らせると思う?」
看護師「親がUzembe(怠惰)だから無理~!」
出た、“Uzembe(怠惰)”。
私が看護ケアについて質問すると、頻繁に帰ってくる言葉。
私「~しないの?」
看護師「やった方がいいけど、私たちUzembeだから♪」
語尾が踊っている、てへぺろ的な。
完全に開き直ってる。ちーん。
…みんながみんなそうじゃないけど、
どこか人に対する関心が薄い国民性な気がする。
そういう考え方だから、
看護師が患者に対して、親が自分の子どもに対して、
Uzembe(怠惰)になってしまうのかなって。。。
そういうタンザニア人の楽観的な所も好きだけど、
愛の反対は無関心らしいよー!!!
そして、愛には責任が伴うと思うよー!!!
だからと言って、今まで関心がなかったことに、関心を持つなんて…至難の業。
私だって無関心なことにはとことん無関心。
行動変容に頼るActive Preventionには限界がある。
だからこそ、行動変容なしで予防できるPassive Preventionが同時に必要。
車で言う、シートベルト(行動変容)とエアバッグ(受動的な予防)的な。
強制的に火傷のリスク因子を取り除く環境整備。
例えば、子ども福は不燃布にする。
例えば、鍋が安定して置けるかまどの開発。
例えば、短時間でお水を沸騰できる商品の開発。
私は、安全対策講習会的なものをママたちに開きます。
商品を大量生産する〇国企業様、安さだけを求めて商品の大量生産をしないで下さい。
国際機関、企業のみなさん、Passive Preventionの整備、お力を貸して下さい。
以上、現場の声でした。